このコラムは、独善度の高さが示しているように、少々過激な内容となっております。鈴木の独善的な妄想解釈を笑って許せる方のみ、お読みください。

Written by Suzuki on Date : 2004.5.15~24

とりあえず、今回はかなり(チカラ)入ってます。
なんたってこのサイトを作るきっかけになった【ROENTGEN】が材料なんですから。
というワケで、意味もなく鈴木がリキんだおかげで、かなり膨大なテキスト量になってしまったので、
【ROENTGEN収録曲解釈コラム/前半】【ROENTGEN収録曲解釈コラム/後半】【ROENTGEN/総括】の3部構成でお出しします。ちなみに独善度は余裕で80越え・・・、それなりに刺激強い ってことで。

ぶっちゃけハイドマニアの鈴木、か〜な〜り今回のこの【ROENTGEN】にどえらい期待をかけていた。
自ずとアルバムリリース前に耳に舞い込んでくる『音源』から自ら遠ざかり、出来る限りまっさらの状態で【ROENTGEN】を聴こうと意気込んでいたくらいだ。(いつもはミーハー心剥き出しで、リリース前の貴重音源とあらば即刻聴き漁るところである)

恐らく、ちょこちょことシングルを小出しにされていたあたりで、かなりの『飢え』を感じていた鈴木のことだから、こんなたかだか新曲がプラス7曲のアルバム1枚で満足出来るハズがねぇッ!と、どっかでナメてたんだろうと思う。

結果、その努力は思いもよらぬ方向でかなり功を奏することになる。
というのは、ナメてた通り大したことなかったぜ・・・という意味ではない。

「こんな簡潔なアルバムをまっさらに近い状態で聴けて、マジ良かった・・・」

という事だ。簡潔=単純=ヘボ、というワケではない。
鈴木は、簡潔=高度技=素晴らしいと見る人間なのである。

さて、それでは本題。
まずは【ROENTGEN収録曲解釈コラム/前半】からどうぞ。

【ROENTGEN】収録曲解釈コラム / 前半

ズバリ、その名の通り【ROENTGEN】に収録されている全10曲を1曲づつ切り取って、
鈴木的和訳と共にブッた斬っていこう。

 ■01. UNEXPECTED

思いがけない ― 約束
ずっと昔に約束は交わされていた

思いがけない ― 道
空間と時間を通って
その道は私をあなたのもとヘ導いてくれる

思いがけない ― 瞬間
月光を浴びた広場を横切って
私たちは互いの手を見つけた

思いがけない ― 命
星達の祝福の下で会うために
私たちに注がれた生命は そう・・・

とても思いがけないもの

【ROENTGEN】の1曲目であるが、ハイド氏本人も『徐々に始まって2曲目に繋がっていくという、呪文的な感じで・・・』
コメントしているように、『曲』というよりは『音』と称したほうが良いくらいに、幻想的な音が連なるオープニング曲である。
最初の4小節に至っては、金属を擦り合わせるような音、弦が揺れる音のみなのだ。
ようやくメロディーらしいメロディーが入ってくるのは、当のハイド氏本人の歌声なのだから、
かなり不必要な音が削ぎ落された曲である。

不思議な雰囲気を出すには、不思議な音を出す楽器を使えば良い。
そしてハイド氏はそこに自らの声を用いたのだ。多少装飾はされてるものの、最初の出だしで薄く広がっていく音、それはハイド氏の「UNEXPECTED」という呟きだ。なんと言うかその技量と発想・・・、大したものである。

そして、これほどハイド氏の『歌声』がひとつの楽器として成り立ってるのも珍しい。
自身(ハイド氏)の声に完全に合わせた音の選出と配置なのだろう。
(ラルクの曲に【Cradle】という、【UNEXPECTED】に非常に近い浮遊感漂う曲があるが、これほどまでハイド氏の声が
『楽器のひとつ』としては落とし込まれていない。この辺のアレンジの違いも、バンドとソロの違いだと思われる。)

全体に漂う不思議な浮遊感。不明瞭な輪郭なのに、後味は決して悪くない。
曲の中頃を少し越えたあたり、いきなりマイナーから転調してメジャーな明るい雰囲気になる部分なんか、どこか安堵感すら覚えてしまう・・・実に『心地良い呪文』だ。

さてその内容とは。

上記に記したのが一応の鈴木独断和訳(脚色多)である。
【UNEXPECTED】とは【思いがけない・思いもよらない】という意味であり、この単語は典型的な形容詞の形なのだ。単体で置かれることは無いはずの形容詞がひと単語、ひたすら「♪アンエクスペクティッドゥ〜」と繰り返される。
というわけで、鈴木はその形容詞がかかるのであろう名詞が、それぞれ『UNEXPECTED』の後に隠されていると踏んでみた。その隠されていた(と鈴木が勝手に思ってる)単語を、パズルのように当てはめてみたのが上記の和訳なのだが、隠されていた単語は全部で4つ。

【約束】【道】【瞬間】【命】

また、マイナーからメジャーへ転調するのは、和訳内容で言うと「空間と時間を通って〜」からなのだが、簡単に言うと、暗い曲調で淡々と歌われているのは【約束】についての部分だけなのだ。延々と永い時と彷徨った末に果たされた約束、というのが実に上手い具合に『曲調』によって表現されている。
これは琵琶を弾きながら歴史を謡い語る『琵琶法師』に似ているように思う。感情も空気も、謡うのは琵琶の奏でる音、その曲調。そしてストーリーを淡々と謡うのが語り部の役目・・・、まさにハイド氏は語り部だ。

そんなハイド琵琶法師が【UNEXPECTED】で語るストーリーをまとめると、こうである。

約束があった。
その約束はとても思いがけないもので、きっと本人達すらも記憶から消えていたほど昔に交わされたもの。
それもそのはず、約束を交わしたのは自分達よりも幾代も以前の魂。その約束に導かれて、2つの魂は出逢いであり、再会でもある逢瀬を実現させた。星達が見守るこの世界で・・・

というストーリーではなかろうか。
ただし、この世界が『現実』かどうかは語られていない所がいかにもハイド氏らしい
夢の中かもしれないし、死後の世界かもしれない。もしくは、無限の宇宙空間か?
つまりは、この呪文が歌うのは【輪廻転生の奇跡】。最後はまたマイナー調に転調して、最後は何かが流れ消えていくような音で終わる。そう、約束は終わることなく、途切れることなく、再び永きの時の流れの中を漂い続けるのだろう。

ハイド琵琶法師が謡う輪廻転生に込められた想いは、
『出会いあれば別れあり、別れあれば出会いあり』

仲良く魂が再会したところで「めでたしめでたし♪」と終われないのは、この曲が1曲目に位置した宿命である。

 ■02. WHITE SONG

呼吸
清清しく 浄罪された冬の大気
平和な眠りの世界を夢見る
雪は優雅に降り注いで
冬の深い魅力を私は嬉しく思う
待てないよ
待てないよ

凍結
人々は火のまわりに集まって
寒さが励起するすべての暖かさを感じる
霜で覆われた樹の先端は明るく光り輝き
今宵も淡い銀の夜を彩るでしょう
待てないよ
待てないよ

もうすぐたくさんの雪が私たちに降り注ぎますように
どこまでも
全世界がただの白に覆われて
私も真っ白にリセットされるでしょう
もう一度・・・

・・・そう 雪は降り続く 空からのダイヤモンドのように・・・

壊れた心へ降り注いだなら遥かな季節も渡って行ける!

もうすぐたくさんの雪が私たちに降り注ぎますように
どこまでも
全世界がただの白に覆われて
私も真っ白にリセットされるでしょう
もう一度・・・

【ROENTGEN】の2曲目。なんと2曲目にして、早くもハイド氏の壊れた世界が両手を広げて待ち構えているのだ。末恐ろしいアルバムである。

この曲については、以前『冬のほうが暖かいと思う。冬に感じる暖かさを書きたかった』というようなコメントを目にしていた鈴木は、その言葉からさぞかし『平和的な暖かい曲』というのを想像してしまっていたのだが、それが大間違いだったのだ。この曲だけ、イマイチ真っさらな状態で聞き込めなかったのが悔やまれる(リリース前にすでにちょっとした音源&情報を得てしまっていた)。

まずその音を耳にした率直な感想、『キレイな曲』である。
付け加えて、ハイド氏のソロ曲には珍しく、『華麗』と称しても良いくらいの豪華さだ。オーケストラがふんだんにフィーチャーされてて、壮大荘厳なその曲調。盛り上がりを一気に高めるシンフォニーの刻みなんか、とてつもない『強さ』を感じさせる。

そう、感じさせるのに・・・ッ!!

そこで歌われていたのは、なんとも弱く儚く冷たい人間像であった。

(※注:ここから先は、かなりひねくれた解釈になるので注意されたし)

もう、ストーリーは上記の和訳どおりである。
今回はしっかりとした英文の歌詞だったので、鈴木独断解釈はあまり交えることなく本物の和訳に近い。

主人公は、『冬』というものに幻想に近い憧れ を抱いているようだ。
そして、どうも『雪』が現実逃避を手伝ってくれるアイテムらしい。

【雪が降り注ぎ 私も真っ白にリセットされる】

つまり、鈴木の独断解釈はこうである。

 主人公は過去、冬以外の季節(いや、冬かもしれないけど)に何らかの事件に出くわし、
 酷く【壊れた心】になってしまった。しかし毎年訪れる暖かい冬に癒され、雪でリセットされて、
 またその次の季節に羽ばたいていこう・・・

・・・という壊れた人間の立ち直り劇が、こんなにも華麗優美な美しい曲調に乗せて歌われていたのか。
それにしてもこの主人公、女性を思って描かれたのだろうか?酷く弱い(脆い)人間像である。
コントラバスの奏でる『強さ』もなんのその、この主人公は自分の【壊れた心】が直視出来ないようだ。
【ただの白に覆われて 私も真っ白にリセットされる】とはそういう事だろう。
『傷』を克服出来ずに、必死に抱え込んで生きる弱い人なんだ・・・

と、最初は思っていたのだが、実はそんな単純なもんじゃなかったらしい。
なぜなら真実はとてつもなく強かったのだ、この主人公はッ!!

今までのような内容で解釈してると妙な違和感 が残る。
随分と弱い想いで『逃避』に走ってる割には、【壊れた心へ降り注いだなら遥かな季節も渡って行ける!】という一文だけがやけに浮いてるように思う。なんたって語尾は『!』である。傷が直視出来ず過去に記憶から立ち直れないハズの主人公が、まるで何かを決意してるかのような言い切りぶりなのだ。

それだけではない。
サビの後に切なくも何かを渇望するような響きを持つ【Once again】もオカシイのである。
主人公は繰り返し何度も『リセット』を望んでいるのだ。
一度【壊れた心】がリセットされたのなら、それで良いはずじゃないか。

ということは・・・

主人公が「もう一度、もう一度」と繰り返し『リセット』を望んでいるのは、決してその『傷付いた心』などでは無いということだ。主人公が繰り返しリセットを望んでいるのは・・・

日々の中で薄れてゆく憎悪・・・その『強く歪んだ心』ではあるまいか。
それは消えるリセットではなく、再燃させるリセットとして。結果として産まれるのが、過去の事件の復讐であろう。
この主人公は、もはや復讐することだけが、生きる気力になっているのだ。

そう解釈すると、俄然納得がいく。
『冬の暖かさ』にこうも幻想に近い憧れを抱いているのは、復讐の業火に身を焦がす醜い自分には決して手に届かないものだからである。人々が火の周りに集まっているのに、なぜ主人公だけはまるで傍観するかのような遠い視線なのだろう?なぜ一人、夜を待ちわびているのだろう?それは『冬の暖かさ』に触れたくても触れてはいけないから。
決して癒されてはいけない【壊れた心】、絶やしてはいけない【復讐心】

ヒィぃーー、これは終りなき復讐に身を焦がす主人公の歌だったのかッ!?

『暖かい幸せ』とは正反対の、『悲しい復讐心』に溺れた主人公であったのだ。
そう解釈すれば『儚美』というより『華麗』のほうがしっくりくるこの豪華荘厳な曲調にも納得出来る。
アウトロの締めも、よく聴けばまるでこれから何かが始まるかのような締めではありませんか!

そう思って聴くと、ハイド氏の歌声・・・ 超緊迫した怖い雰囲気 に聴こえるから不思議だ。
ちなみに解釈前と解釈後で、曲のイメージが一番変わったのがこの曲である。
まぁ、ハイド氏らしい世界観になったと言えばそうなんだけど。

なんにせよ、【壊れた心】の持ち主である主人公は決して救われないらしい。
これもまた2曲目に置かれた宿命なのだ。

■03. evergreen

【ROENTGEN】3曲目。ファーストシングルとして華々しい誕生を飾った曲である。
この曲は日本語版があるので、もちろん和訳は省略。

ハイド氏のコメントでは、『昔のバンドのベースの方が亡くなられて、その方の奥さんへの想いを代弁したようなものだ』と語っていたわけだが、まさしくテーマは【死にゆく人】である。
実はラルクにも同じ題材で書かれた曲がある。それが【花葬】だ。

 ― 余談 ―
  今回の【evergreen】で、某雑誌でライターが『心中にも思える』 とコメントしていたのだが、
  当時【花葬】も実は同じことを別の某ライターからコメントされていたのは偶然だろうか?
  どうもハイド氏の描く『死』は、同伴者の影が付き纏う不吉さがあるらしい。

話は戻って、歌詞を見比べてみてハッキリと死を歌っているのは【花葬】のほうである。
【腐食してゆく身体】【土の中で】【ばらばらに散らばる】など、その表現は結構グロい。

それに引き換え、【evergreen】はどうであろうか。
まず冒頭で歌われているのは、死を目前にした風前の灯火状態の主人公
穏やかで、優しい時間の流れる病室にでも居るのだろう。
そして曲は本編に入り、Aメロでついに主人公は生への執着と死への後悔に襲われる
【痛みの分だけ戻せたなら】など、切ない極みの言葉が続くのが心痛い。
サビでは病院の庭で目前の死を悲しむ愛しい人が、とうとう涙を見せた。

曲は2順目に入り、2番は2人の甘い思い出・・・回想シーンか?と思いきや、ここはさすが邪悪ハイド氏
単なる思い出浸りには終わらない。さりげなく【そっと身体に流れる薬みたいに溶けていったね】などと、
いきなり苦痛の闘病生活を髣髴させる言葉が盛り込まれたりするのだ。

あとはサビ、大サビの豪華オンパレードで、動かしたくても動かない身体や、愛しい人に握られたままの手の感触・・・など、ただただ死を悔やむ主人公の淡くも激しい悲しみが歌われて、曲の終了と共に主人公の命は幕を閉じる

死後の余韻に執着して強烈なインパクトでもって描かれていた【花葬
死の数分前から死の瞬間の無念までを丁寧に描いた【evergreen

同じ『死』を題材にしながら、【花葬】は15秒間のCM、【evergreen】は2時間のドキュメンタリー番組というほど、そのストーリーには差がある。どちらが良い悪いでは無い。完全に好みの問題なのだ。
一瞬の派手なインパクトを求めるならば【花葬】
じわじわと胸を締め付ける悲しみに涙したい人は【evergreen】をお勧めする。

ひとつの題材で、ここまで幅の在るストーリーが書けるものなのかと、ただただ感嘆のため息の漏れる一曲。
この曲が3曲目に配されたのは【死への戒め】に他ならない。

 ■04. OASIS

この不毛な道は永久に曲がっている
それは出口の無いあなたの強さを衰弱させるでしょう
乾燥した風 燃えている太陽
私は燃え尽きたエンジンのわきに捨てている

何も無い世界で何処へ行けばいいのか?
強い眩暈 蛇の毒
それは私を破滅に導く

高く舞い上がる私の熱 私を取り囲み踊る死神
月と太陽は今日も馬鹿げた鬩ぎ合い
離れた地平線上には手招くオアシス
蜃気楼かどうか?
眩暈がする・・・
催眠術にでもかけられたみたいだ

最後のタバコに火を付ける時
それは自分の運命を決める時
あの場所へ行くべきか?
・・・それとも逃げるべき?

答えもない
高く舞い上がる私の熱 私を取り囲み踊る死神
月と太陽は今日も馬鹿げた鬩ぎ合い
離れた地平線上には手招くオアシス
蜃気楼かどうか?
眩暈がする・・・
催眠術にでもかけられたみたいだ

眩暈に抱かれ 全てが私を取り囲む
破壊と創造が今日も馬鹿げた鬩ぎ合い
離れた地平線上には手招くオアシス
蜃気楼かどうか?
眩暈がする・・・
私は魅了されているんだ

【ROENTGEN】4曲目。真打登場である。
2曲目の【WHITE SONG】がいきなり壊れた世界で、早くも「2曲目にして真打かッ!?」と焦ったのだが、真の真打はやはりこの曲、4曲目であった。

どこが真打なのよ?と思われたことだろう。説明しよう。
【OASIS】という曲は・・・説明・・・・・・・説明出来ないのだ
いや、サッパリ分からない曲、というのが何よりの説明か?いやいや、ハイド氏の描く本当の世界観など分からなくて当たり前なのだが、それでもあの【WHITE SONG】でさえ(ハチャメチャとは言え)解説出来た。
それがこの【OASIS】に至っては、お手上げ降参なのである。

一応の鈴木的独断解釈を交えた和訳は上記に完成させたのだが・・・我ながら、書いていてサッパリ分からなかった。なんとなく分かるのは主人公は何かに酷く思い悩んでいるということくらいである。絶望して全てを投げ出す・・・なんてことも出来ずに、果ては死神の幻想に取り付かれ、ただただ人生のレールの上で転がされている、と。本当に追い詰められた人間は、死神が誘う世界がオアシスに見えるってトコだろうか。「あの場所へ行くべきか?」と悩んでる、【あの場所】。その行き着く先が『全ての終わり』=『死』、ということなのだろう。喫煙者にとっては、死ぬ前の最後の1本はどうしても特別だしな。

曲調にしてみても、場所場所でその曲調が酷く変化する
鳥が一羽横切っていくような羽ばたき音が右から左に流れていき、その後は本当に『コロコロ変わる』という文字通り、なんだかぐるぐる回ってるような展開で進んで行く。まるで主人公の揺れ動く心のような、出口の無い迷路をさ迷い歩いてるような・・・。ただ一瞬、まるで視界が開けるかのように音が止み、ハイド氏の声が響き渡る「♪As I light〜」という所で、まるで心臓を鷲掴みされたような違和感に陥る。

さらに異様な違和感は続く。サビの部分である。
よ〜〜〜く耳を澄ましてみると、『ウヨウヨゴポゴポ』という妙な音が聴こえるのだ。DJのスクラッチか?
なんとなく聴いてると、水が湧き上がってくるような音である。
終始『焦燥感』が付き纏うこの曲が歌う【OASIS】とは、決して砂漠に湧き出る命の水なんかではないだろうに、水の音だけは響き渡る。蜃気楼で出現する幻覚にしては、なんとも腹黒くタチの悪い作りだ。

ここまで包み隠された壊れた曲こそ、いかにもアルバムの醍醐味である『隠れた名曲』のようで、鈴木がハマってしまうのである。

この曲が4曲目に配されている意図は、ここでいったん【ROENTGEN】というアルバムの混沌に落とし込むのである。答えを得られないまま進む先で、今度はどんな世界が待ち受けているんだろう。
実に期待と不安を煽る4曲目である。

 ■05. A Drop of Colour

混乱がこの変動の時代を支配して
そして騒動が町を満たす
私の貴方への想いは雑音に溺れている
どうやって知ったの?
何故 私を知らなくてはならなかったの?

貴方は私の乾燥した肌を優しく養い育てる
一滴の色が 私をこの日常の運命から救ってくれる
たった一つの花が雪の吹きだまりを突き抜けていく

どれくらい柔らかく 春のそよ風は歌う
どれくらい深く 離れた山脈は呼吸する
貴方に見せるものは まだたくさんある

おぉ・・・なぜ嫌うの 何故より多くを嫌悪するの?
長い間 見捨てられていた果物
腐食のプロセスを促進している
この国は飢え、それが感覚を失わせている

どれくらい柔らかく 春のそよ風は歌う
どれくらい深く 離れた山脈は呼吸する
貴方に見せるものは まだたくさんある

どれくらい柔らかく 春のそよ風は歌う
どれくらい深く 離れた山脈は呼吸する
貴方に見せるものは まだたくさんある

【ROENTGEN】の5曲目、前半の最終曲である。
ひとつ前の4曲目【OASIS】であからさまな『焦燥感』が歌われていたが、まるでそれを引き継いだかのように、この曲にも淡い焦燥感が付き纏う。

この曲は映画『化粧師』のイメージソングとして書き下ろされてもので、その内容も、非常に映画に精通した内容である。映画では化粧の美しさと、現場を取り囲む山々の美の融合が見事な映像美を生み出し、人間の心の機微の表現に花を添えていたわけだが、まさにこの曲もそうなのだ。

 時は戦の混沌に満ちた時代。
 己の命を食い繋ぐだけでも必死な中、想いを寄せた者同士が結ばれることなど難しかったその時代。
 結ばれることが出来ないのなら、どうして出会ってしまったのか?どうして私を救ってくれたのか?
 腐食してゆく国に飲まれながら、残された自然に想いを馳せて、心に強く焼きつくこの光景を
 愛する貴方に見せてあげたいと願う・・・

と、まぁこんな感じである。
その曲調であるが、これはすでに【ROENTGEN】発売前から音源を入手していて、だいぶ聴き込んでいたのだが、実は最初は『サビ』の部分しか知らなかった。入手したサビだけの音源を繰り返し聴き込んでいたわけだが、ある日ようやく初めて曲の全貌の音源を聴き、鈴木は衝撃を受けたのを覚えている。

「こ・・っ こんなにジャジーな曲だったのかッ!?」

サビの直前から引き寄せられるように近付いてくるストリングスの音が、サビにて爆発。流れる風のような心地良い広がりを持たせているのだが、出だしからサビ直前までのAメロBメロは全くと言って良いほど 『閉鎖的』 な音なのだ。しかもピアノが要所要所で刻むリズムは、途切れが味の『ジャジー風味』である。途切れ途切れ、弾むようなテンポで続いてきた曲調が、突如としてサビで開放感満ち溢れた曲調に転じる。この落差がスゴイ!!

この曲は映画のイメージソングという、すでに内容が定められていたような曲だけに、注目すべきはその『音』であったのだが、これは見事に期待を良い意味で裏切るような内容であった。

閉鎖的な曲調の中で歌われるのは、結ばれないことへの【焦燥感】や、思い通りに生きられない【感覚を失った人】などのマイナス要素の世界であり、また開放的な曲調の中で歌われるのは、腐食のプロセスを進行する国に残された数少ない【自然美】というプラス要素の世界であった。
そのマイナスとプラスの分子を繋いでいるのが、どうやら【色】なのである。

一滴の色】で繋がれたマイナスとプラスの2つの世界
A Drop of Colour】で繋がれるマイナスとプラスの2つの世界観

5曲目という前半終了の節目に置かれたこの曲は、常に【死の影】が付き纏ったマイナスの世界観であるアルバム前半と、これから広がるであろうプラスの世界観であるアルバム後半とを繋ぐ、重要な役目を担っている。


以上、お粗末さまでした。