このコラムは、独善度の高さが示しているように、少々過激な内容となっております。鈴木の独善的な妄想解釈を笑って許せる方のみ、お読みください。

Written by Suzuki on Date : 2003.1.24~25

 『 3 』

いまだ誰にも破られることなく、そしてシングルセールス不況の今現在では恐らくもうこの記録が破られることはないであろう。そう、言わずもがなラルクアンシエルによるシングル同時リリース枚数記録である。
今回は、この『挑戦』とも言うべき破天荒なリリーススタイルで話題を一世風靡した、
【HONEY】【花葬】【浸食〜lose control〜】3枚同時発売をブッた斬ります。

― 1997年10月末

オリコンシングルチャートTOP10以内に、見慣れない名前が上がっていた。

【 虹 】 L'Arc〜en〜Ciel / Ki/oon records

半年間の活動休止期間を経て、本格的活動再開とともにラルクが世に放ったシングルである。
このシングルのオリコン最高ランキングは初登場時の3位。頂点でもなければ決して低くもないこのランク。
青天の霹靂とはこのことである。突如として出現した謎のバンドの再始動は、まさに『今後』を予感させる嵐の前の静けさのような不気味な滑り出しであった。

― 1998年1月

いつの間にか世間にはとあるバンドの名前が異常なスピードで広がっていた。
何故ならその妙なバンドが、昨年の10月末に引き続き再びオリコンシングルチャートに顔を出したのである。

【 winter fall 】 L'Arc〜en〜Ciel / Ki/oon records

前回のシングルから3ヶ月。そして前回と違うのはその順位であった。なんと初登場にして堂々1位に踊り出ていたのである。一体この3ヶ月間の間で3位から1位に駆け上がったプロセスとは何だったのだろうか?
そう、すでに昨年の再始動からこの妙なバンドの壮大な計画は始まっていたのだ。

前シングルの【虹】リリース時、彼らは有料チャンネルおよび民放の深夜枠番組にちょこちょこ顔を出していたのだ。つまり逆に言えば、民放のゴールデンを飾る王道の音楽番組にはあまり顔を出さなかったのである。それは単にお呼びが掛からなかったのか、はたまた彼らの作戦だったのか・・・、答えは間違いなく後者だ。音楽番組の大御所・テレ朝系ミュージックステーションのみ出演を果たしていた彼らだが、活動休止以前にもこの番組にはそれこそほぼデビュー当初から出演していたので、当然の出演である。だがしかし、活動休止以前に出演していた音楽番組はこれだけではない。復活を華々しく飾るのであれば、以前出演していた番組を総ナメして世にリリースをアピールすれば良い。それが困難なほど、テレビ関係者側に活動休止以前の彼らの認知度が低かったとも思えない。むしろミリオンセールスをすでに達成した実績を持つ上がり調子のバンドだったのだから、その話題性は十分のはずだった。

・・・という以上の理由から、やはり復活第一弾シングルであった【虹】リリース時は、
メディアへの露出をある程度意図的に控えていた感が否めない。

さて、どうしてだろうか?
売る為にはそれ相応のプロモーションは必須である。それをあえて抑えた理由とは?

それが明らかになるのは、【虹】リリースから実に9ヶ月後のことである。

復活第二弾シングル【winter fall】の、初登場にして初の第1位という順調な滑り出し。

・・・そう、順調な滑り出し。これはスゴイ滑り出しなのだ。
何故なら、翌月には【HEART】というアルバムのリリースがすでに決定し、この【winter fall】の収録も発表されていたからだ。つまりこのシングルは完全に アルバム先行シングル だったのである。そんなシングルで初登場初の第1位。
今現在のシングルセールス不況では考えられない事態じゃないか。

そしてこのシングルリリースを皮切りに、ついに彼らのプロモーション量は明らかに増え、その実体が世間に現れてきた。つい数週間前までは世間の印象としてはまだ『誰だ?』程度であった彼らが、テレビを付ければあちらこちらでその顔が拝めるようになったのだ。そうしてじっくりを実体を拝むことが出来るようになった彼らは、ヴォーカルのハイド氏を筆頭に実に印象的な容姿を持っていた。だが実体を露にした彼らからは、全くといって良いほど『気負い』は感じられなかった。アーティストなら誰しもが夢見る『オリコン第1位』を獲得したというのに。彼らがただの【winter fall】のみの一発屋だったとしたら、ここで大いに喜び舞い上がったことだろう。(そういうトコもちょっとは見てみたいとも思う)
だが、なんせまだこの【winter fall】は、彼らの壮大なプロジェクトの序章に過ぎないのだ。
こんなところで喜び勇んでる場合ではない。

そしてその直後、のほほんと構えていた世間はあっという間にこの妙なバンドに飲み込まれていく。

― 1998年2月末

徐々に実体が露になった彼等は、『名刺』代わりに一枚のアルバムを世に放つ。

【 HEART 】 L'Arc〜en〜Ciel / Ki/oon records

この名刺代わりのアルバムが初登場オリコン1位に輝いたのを皮切りに、マスコミはこぞってこの妙な名前の謎バンドを取り上げた。その話題性も相まって、その2ヵ月後にリリースされたシングル【DIVE TO BLUE】までもが
初登場1位を獲得。もはやこの妙なバンドはただの一発屋ではない、と世間が認識した瞬間であった。

そしてこの頃から頻繁にマスコミでは活動休止以前に、彼らがすでにミリオンセラーのアルバム【True】をリリースしていた事実が報道されるようになり、『一発屋』→『大物』というイメージの飛躍とともに、
『名前の長い妙な謎バンド』→『実績実力バンド』への変身を遂げたのである。

まさにこれこそが彼らの真の『復活』であった。
バンドとして再始動しただけならば『活動再開』としか言わない。
『復活』というのは、活動休止以前の・・・いや、それ以上の勢いと実力をもってして初めて『復活』と呼べるのだ。
これで復活第一弾シングル【虹】リリース時に、あえてメディア露出を抑えていた理由も分かる。
彼らが目指していたのは、最初からこの『真の復活』であり、単なる『活動再開』ではなかったというわけだ。

この壮大な【真の復活プロジェクト】は、彼らが使った『アイテム』=『世に放ったシングル』を見ても分かる。

 【 虹 / THE GHOST IN MY ROOM 】
 【 winter fall / metropolis 】
 【 DIVE TO BLUE / Peeping Tom】

一曲づつ簡単に説明していこう。

まず第一弾シングルとなった【虹】
復活にはあまり相応しいとは思えない、重厚でダークな曲調をもった曲である。これは当時どの音楽雑誌でも、
インタビュアーに『なぜ復活にあえてこういう曲調の曲を?』と質問攻めにされていた事実だ。なぜ、あえて復活リリースにこの決して明るくは無い曲を選んだのか?ここまで読み進めてきた人はお分かりだろう。
彼らにとっては、【虹】のリリースはまだ真の復活ではなかったのだ。

続いてリリースされたシングル【winter fall】
メディアへの露出の増加に伴い、売上が急上昇した末にリリースされたシングル。
彼らは、ようやくここで明るい曲調を取り入れた。程好く大衆的で非常に耳にも馴染みやすい曲である。
認知度が高まってからこういう曲を出す・・・という、実に堅実な道を歩いている印象がある。
当然だ。彼らの壮大な【真の復活プロジェクト】には、失敗は禁物なのだから。

そしてバンドが完全に軌道に乗ったという確認(オリコンチャート1位獲得)をした後、トドメ!とばかりにリリースされたのが【DIVE TO BLUE】である。【winter fall】を上回るメジャー曲調と、今までに無い大衆性を多く取り入れた歌詞。
『馴染みやすくて良い曲』を地でいく曲だ。

続いて【虹】のカップリングに収録された【THE GHOST IN MY ROOM】と、【winter fall】のカップリングに収録された【metropolis】。この2曲は以前BGMレビューにて取り上げた際に全てを記載済なので、そちらから抜粋。

シングル【虹】と【winter fall】のカップリング曲である、【THE GHOST IN MY ROOM】【metropolis】の共通点。キーワードはズバリ、『落とし込むメロディ』『浮世離れした歌詞』である。

まず『落とし込むメロディ』とは、如何なものか?
2枚のシングルのカップリング曲双方とも、メロディは決して暗くない。むしろ一番強い印象を受けるのは『ポップ』という感覚ではなかろうか。双方とも、弾んで途切れて流れてまた弾むそのテンポが明確で、実にノリやすい。そう・・・非常にノリやすいテンポなのだ。

だがしかしッ!!
そのテンポに乗る旋律は、引かず達せずの超中立音ばかりではありませんか。

すっこーんッと気持ち良いほど突き抜けるような高音も無ければ、地を這うような耳に心地良い低音があるわけでもない。それはヴォーカル・ギター・ベース・ドラム・・・『音』を奏でる全ての要素に共通して言える。【metropolis】にあやかって、か〜なり卑猥な表現をさせてもらえば、

「動きばっか早くたって、ポイント突いてくんなきゃイケないのよッ!」

まさしく、イキたくてもイケないというジレンマ。(意味が分からない子、ゴメンね)
この場合、ラルクがテク無しということではなくて、あえてそのテクを披露していないのだ。
その狙いは言わずもがな、そう簡単にはイカさない為である。

そして『浮世離れした歌詞』のほうであるが、これはあえて説明するまでもないだろう。
【metropolis】【THE GHOST IN MY ROOM】とも、一般的な現実世界で考え得る設定ではないのは明白。そんじょそこらに転がってる日常的(もしくは『人間的』とも言える)な設定では決してない。なんたって一方は『幽霊』と、もう一方は『アンドロイド』ときてる。

― 余談 ―
『幽霊』『アンドロイド』
双方とも形容だけに目を向ければどちらも【人間】の様をしているイメージのモノである。
果たしてこれは偶然なのか、はたまたハイド氏の恐るべし狙いなのか・・・。

そういった非現実的な世界設定で書かれた歌詞の曲は、多少の個人差はあれど、『喜』『怒』『哀』『楽』・・・といった直接的な感情に結び付け難いと言えるだろう。(まぁそれはハイド氏の歌詞全般に言えることだけど)

それに引き換え【虹】【winter fall】は、まさに対極にあるような曲だ。
とは言っても、所詮はハイド氏の歌詞なので、そうあからさまに直接的な歌詞であることはまず有り得ないが、それでも

 『目を閉じていつも見てた 風景のように何度目かの雨も上がった』
 『彼女が見つめていた 窓辺に置かれたガラス細工』

など、ラルクの曲の中でも比較的日常で使うような普通の言葉が並び、イメージしやすい情景の歌詞に仕上がっている。メロディも言わずもがな、【虹】【winter fall】ともサビですっこーんッと突き抜けるように高音が炸裂し、AメロBメロには低音部分がしっかりと盛り込まれている。

対極にあると言ってもよい曲のカップリングとして、それぞれに収録された2曲。

以上のことから、この2枚のシングルに収録されたカップリング曲は一貫して、とある意図のもと選曲されていたことがな〜んとなく伺えるのだ。

とある意図

それは・・・

『 理解し難い歌詞によって【ラルクアンシエル】の無固定概念を維持すること 』
『 イカせないメロディによって大衆的欲求を高めること 』

という2点に他ならない。
いわゆるこれは業界戦略的で言えば『煽り』である。

その戦略は見事成功し、煽った後にリリースされたシングル【DIVE TO BLUE】は初登場オリコンチャート1位を記録。だがしかし、これはまだ【大爆発】の序章に過ぎなかったのだ。
『煽り』から『序章成功』を経て、ついに彼らのスイッチは本気モードに切り替わった。

彼らの本気モードって?

それは、今まで次段階への煽りのステップとしてフル活用していた『カップリング曲』という存在を一切排除した『ワンマンシングル3枚同時リリース』に他ならないッ!!

・・・という話だったわけだが、そうまさにその通りなのだ。
半年前の活動再開時には、その一過性の話題性のみで『一発屋』とならないよう、自らストッパーをかけるように
水面下でじわじわとその認知度を広げ、翌年からは突如弾けたように表立って意欲的なプロモーション活動を展開することで、さらにその認知度を高めた。
それと同時に彼ら自身だけが持ちえる技をふんだんに織り交ぜた『楽曲』というアイテムで世間的欲求を高めて煽ることにより、ついに活動開始から9ヶ月後の1998年7月、真の復活を遂げた彼らの最後の仕上げとなる舞台の準備が全て整ったのだ。

その『最後の仕上げ』というのが、言わずもがなのあのシングル3枚同時リリースである。

無事『真の復活』を遂げた彼らが、まさかそれで「ハイおしまい」のわけがない。言うなればこの『真の復活』すらも壮大プロジェクトのひと駒に過ぎない、ということだ。そう、真の復活を遂げた彼らの次なる目的とは、まだ他のどんなアーティストも成しえていない事・・・つまり未知の世界への挑戦である。
そしてこのシングル3枚同時リリースこそが、その『挑戦状』 だったのだ。

これまでの【winer fall】【DIVE TO BLUE】というオリコン初登場1位を獲得した2曲を成功に至らしめていた最たる要因、『程よい大衆性』すらもあえて外しまくったこの『挑戦状』(ディープでマイナーな曲調の【花葬】や、事前に映画【GODZZILA】のサントラに収録されリリース済みだった超変拍子曲である【浸食〜lose control〜】が売れ線狙いのシングル曲だったとは到底思えない)は、見事【HONEY】【花葬】【浸食〜lose control〜】3曲ともがぞれぞれ
ミリオンセールス記録を樹立、という完全大勝の結果で幕を閉じた。
ちなみに、現在の音楽業界ではミリオンセールスを達成するシングル曲は一年に5曲出るか出ないかである。

が、さらに言えば彼らがこの年(1998年)にリリースしたシングルCD【winter fall】【DIVE TO BLUE】【HONEY】【花葬】【浸食 〜lose control〜】【snow drop】【forbidden lover】 計7枚の総売上枚数は1,000万枚を突破しており、
その実『完全大勝』の結果はミリオンどころのお話ではなかったのだ。

極限まで煽り高めた世間の欲求は、まずその『3枚』という数字だけでも十分に満足出来るものだった。
付け加えて、3曲それぞれがもつ曲調と世界観の相違の激しさは、まさに聴く者に『驚き』と『期待』と『満足感』を与えただろう。カップリング曲を排した『ワンマンシングル』というスタイルも、単に「曲が出来ませんでした」なんて生温い理由ではない。あえて意図的にカップリング曲を排したのだ。
これまでの復活プロジェクトで、『煽り』のアイテムとして用いてきたカップリング曲。
それをあえて外すということは、カップリング曲を排す=小細工は不要、ということに他ならない。
なんせ前代未聞の3枚同時リリースという奇想天外な大技をやってのけたバンドだ。
彼ら本人達も当時『次はどうする?4枚いっとくか?って感じ』というノリノリのコメントをしていたことから、
『これ以上の煽りは不要、すでに世間の関心の的は十分自分達にある』という自信が垣間見れる。

いやはや『モンスターバンド』と称される軌跡には、それに値するだけの地道かつ堅実な足取りが確かにあったのだ。9ヶ月前のあの静かな活動再開から、一体誰がこれほど完璧かつ大胆不敵な大勝負を想像しただろうか?

そう・・・一見無謀とも思えた彼らの挑戦の結果は、完全なる確信犯達による当然の勝利だったのだ。


以上、お粗末さまでした。