Written by Suzuki on Date : 2006.1.1

大変長らくお待たせ致しました。
ラルクアンシエルにとって「節目」とも言うべきバンド史上最も重要な一曲となった今曲。
およそ2年の歳月をかけて当初予定していた内容とは大きく様変わりしたレビューとなりましたが、鈴木渾身の完全徹底レビューをお届けします。果たして、この内容をレビューととるか何ととるかは・・・皆様次第です。


本曲において、何よりもまず先に触れるべき点はこの『タイトル』である。

バンド事情により、本曲のリリースは大変注目されていた。
「『ラルクアンシエル』の未来がかかっていた」と言っても過言ではないかもしれない。
そんな重要曲にバンド名と同じ意味である『虹』を名づけた事に、当時のメディアはこぞって
「バンドの前向きな決意が見て取れる」と述べていた。

まさに、その通りだ。

とは言っても、そこは“ラルクアンシエル”という一癖二癖・・・ならぬ、七癖くらい腹に抱えているバンドである。
ただ素直に「ズバリ『虹』ってな曲で一から再出発してこうゼ★エィ!エィ!オー!」という意味でこのタイトルが名付けられたわけではない。前述したように、このタイトルについて「前向きな決意」と述べていたライター及び音楽雑誌各社を当時はよく目にしたものだが、実際このタイトル決定に関しては、実はメンバー全員が乗り気ではなかったのだ。

この『虹』というタイトルは、作詞担当のハイド氏によって命名された。
このタイトル決めを巡って、当時の様子を某音楽雑誌にてハイド氏はこう述べている。

「詞を書き始めた時から、なんとなくその言葉はアタマの中にあって。『くさいタイトルやなぁ』と思いながらも
 詞を書き進めていって、まぁタイトルは最後に考えればいいやと思ってんだけど、いざ最後にタイトルを
 考えようと思ったら、もうそれ以外はどうも色あせた感じになってしまって。で、もうクサイけどこれは
 メンバーに言うしかない!と思って、『クサイと思うんやけどどうかなぁ?』って。
 そしたらみんなも神妙な顔して(笑)、『いや、確かにわかるけどぉ』って感じ(笑)。」

という具合に、全員が全員それなりに抵抗を感じていた『虹』というタイトル。
それが実際にタイトルとして決定に至った経緯の詳細は残念ながら定かではない。
さらに、ハイド氏は以前にこうも述べていた事がある。

「バンド名と同じタイトルのアルバムとかって、ほとんど『最後』みたいですよね」

アーティスト人生最後の集大成に、自らの名前を冠することは珍しい事ではない。

当時のそういった諸々のメンバーの心情から、やはりこの『虹』というタイトルに命名するにあたっては、メンバーそれぞれが何かしらの『決意』や『覚悟』といたモノを抱いていた事が見て取れる。

しかし、その決意や覚悟には『未来』や『発展』というよりは、『崖っぷち』『究極の選択』『一世一代の大勝負』くらいの・・・ある意味ギリギリの気迫が滲んでいた。


では次に、そんな『勝負』のタイトルが名付けられた本曲の内容について触れてみる。
まずはメロディから。

本曲の作曲者はken氏である。
しかも「遊んで弾いてるうちに3分くらいで原形が出来ちゃった」という逸話付き。
さらにデモテープの最終形にする為にいじった時間は20分。
つまりは23分程度でほぼ出来上がったという恐ろしい曲だ。

その時の感覚をken氏はこう述べている。

「降りてきた感じ」

古城のホテルの窓際で、ライン川を眺めながらギターをいじっていたらふと出来上がったらしい。
しかも出だしのアルペジオが浮かんですぐに他の部分のメロディも浮かび、それが頭の中で同時に鳴ってしまって、聴き取りが大変だった・・・とか。

もはや外界から何かしらの力が働いてるとしか思えませんが。

『神の啓示』ってあるんですね(笑)。
ken氏も「俺、今までそんなことあり得ないと思ってたんだけどね。スラスラッと無意識に出来るなんてことは。」とコメントしている。

また、本曲は原形が完成した後の編集においては、実に様々な工夫が施されている。
ちょっと専門的なところもあるので、とりあえずken氏が意識した点を分かりやすい所だけ挙げてみよう。

 ・ 洋楽っぽくするつもりは無かったけど、「海外で聴いても“しみる”曲」にはしたかった
 ・ ピアノを入れたかったけどプロデューサーに削られた
 ・ ギターソロで『浮遊感』を出したかった
 ・ 途中で激しく重ためのメロディにガラッと変わる部分は、ドラムの音も大幅に変えてる
 ・ イメージした情景は無い、NOイメージ

と、こんな感じである。
恐らくここに挙げた言葉の10倍くらいのアイデアと細工が、実際の楽曲には施されているだろう。
そうして出来上がった楽曲は、実に起伏に富み、それでいてなんともスムーズに音が流れている。

・・・そう、『流れている』のだ。

これは本曲における「最重要キーワード」でもある。
決して一定ではないのに、早過ぎず遅過ぎず・・・とても自然なスピードでスムーズに音が流れていく。
この感触の理由には、ken氏が意図した通り、曲中に潜む『浮遊感』や、『こだわりまくったアルペジオ』等での音の細工によるところも大きい。

そして、それと同時にこの『流れている感』をより一層掻き立てているのが、
作詞担当ハイド氏による『ハイド・マジック』なのだ。


というわけで、次はいよいよ歌詞の詳細である。

以前、【Feeling Fine】の曲レビュー( 【再起動はスマイル合図】 参照)にて、
「ハイド氏は『メロディとの相性』を、その感性と経験でもって見事に見極めて歌詞を書いている」
というような事を述べたのだが、これも『ハイド・マジック』のひとつだ。
(鈴木が言う『ハイド・マジック』とは、この他にも数パターンある)

では、本曲においてはどのようなタネが仕掛けられているのか見てみよう。

まず最初に見分けるのは本曲の歌詞が「『つぎはぎ』が多いか」「『文章』が多いか」という点だが、
これは文句ナシに「『文章』が多い」方に分類される。
次に「全体的な歌詞量」の点については、「『歌詞量』はごく普通」だろう。
最後に重要なのが「『繰り返し』の頻度」である。
これは冒頭のサビがラストに繰り返されるのみにとどまり、「『繰り返し』頻度は低い」と言える。

 ・ 「『文章』が多い」
 ・ 「『歌詞量』はごく普通」
 ・ 「『繰り返し』頻度は低い」

上記3つの仕掛けが出揃ったところで、お次はいよいよタネ明かし。

まず「『文章』が多い」と、どのような効果が得られるのか?これについては【Feeling Fine】レビューでも述べたが、
「深いグルーブ感」を与えるのに一役買っている。また「『歌詞量』はごく普通」だとどうだろう。
これが先ほどメロディの検証時に述べた「スムーズ感」に繋がる。リスナーが決して消化不良を起こす事も食傷気味になる事もなく、実にスムーズに楽曲を聴き終えることが出来るようにするのにも、こういった地道(?)な仕掛けが物を言うようだ。

特に本曲【虹】は、冒頭で述べたとおり「大変注目されていた曲」だったのだ。
「サビの部分で掴めばとりあえずオッケーじゃん?」だとか、そんな生っちょろい手抜きは一切通用しない
頭からお尻まで前編を通して満腹、もしくは腹八分程度になるよう、この細工は必須だったのだろう。

そして3つ目、「『繰り返し』頻度は低い」と、一体どのような効果をもたらすのか。
これは先に述べた2つの項目のバランス調整にあたる。
いくら全体の歌詞量は普通でも、それがズラ〜っと長い文章ばかりでは正直「くどい」。
本曲には、ややそのズラ〜っと長い文章が見受けられるので、それが繰り返されるとなればさらにその「くどさ」が増してしまう。それ故、本曲では頭とお尻だけを揃えて、その他の部分は一切重なる言葉を用いなかった。あえて頭とお尻だけを揃えたのは、あの部分の言葉こそが核であり、その中でラストの一文、「終らない未来を捧げよう」の相違をより一層引き立たせる為だろう。

・・・という具合に、ken氏の精巧なメロディには、さらにハイド氏の匙加減によって見事に
程好い『グルーブ感』と『スピード感』が同時に与えられている。

明る過ぎず暗過ぎず、早過ぎず遅過ぎず、短過ぎず長過ぎず・・・
本曲はそんな全体的なバランスの良さに付け加え、所々のバランスも絶妙なのだ。

 短い助走の後、一気に駆け足になった音は、その頂点に達した後にゆるやかな足取りとなる。
 再び一歩一歩じわりじわりと溜め込んで、一気に頂点に向かって疾走する。
 そして二度目の頂点を超えた時には、ガラッとスピードの違う景色の中へと飛翔し、そのまま浮遊する。
 再び地に足が着く頃には自然と足取りも緩やかなものとなり、ラスト・ランへと一気に階段を駆け上がる。

その階段の先の先は、きっと『終らない未来』へと続いているのだろう。


― 最後に ―
今回は歌詞の内容についてはあえて触れないようにしました。
それは、やはりどうやっても鈴木が触れていい歌詞ではないように思うからです(笑)。
でも、これでは満足できない方にわずかながらハイド氏ご本人からのヒントを書き記しておきます。
このヒントを手掛かりに、是非この【虹】という曲に込められた意味を探ってみてはいかがでしょうか。

 「自分の思想として、今後おじいちゃんになっても歌えるような大きなことを言いたくて。
  もっと言えば『人類』っていうかそういうレベルで書きたいなぁって。」

どうやら本曲の歌詞にはハイド氏個人の『基本的な思想・理念』が描かれているそうです。
・・・ね?そんなとんでもないモノを、むやみやたらに鈴木がデタラメ解釈なんかしちゃダメでしょ(笑)。


― 余談 ―
現在最新の【AWAKE】を聴いた今、改めて「この人って本当に変わらないなぁ」と思う。
いや、変わったか?1997年当時は「大きなこと」と言っていた事柄が、今ではそれこそ『日常的な理念』になってらっしゃるようで(笑)。8年かけて視野がさらに広く、懐も深くなってるみたいですね。
でも芯は全く変わってないし、ほんの少しもブレないね、この人。ハイドさんってそういう人なのねぇ。


以上、200000HITゲッターのるるさんに捧げます。有難うございました。